コラム

2006/06/15

信玄公の世界文化遺産(甲・SY)


▼戦国武将の武田信玄公が治水のために整備したといわれる「信玄堤」。長年にわたり甲府盆地の人々を悩ませた水害を大幅に減少させ、500年後の現在も機能している世界文化遺産的な治水施設である。現代の治水施設は、水の勢いを止めることにエネルギーが費やされているが、信玄堤は水の力を利用して水の勢いを弱めるという戦略的な治水施設である

▼信玄公というと、戦国時代実力ナンバーワンの甲州武田軍団を率いた戦いのうまい武将のイメージが強いが、実際にはこの現代の公共事業のお手本ともいうべき信玄堤の立案者であり、現代企業のフレックスタイムを先取りしたような家臣の性格・体質に合わせた時間差出勤を創設した経営者の顔も持っている

▼また、信玄堤の着想は現在の中国・四川省にある古代治水施設から得ているといわれ、おそらく甲府を訪れた中国からの渡来僧などが語るその優秀な技術に耳を傾ける学者肌の面もあったのだろう

▼信玄公の肖像画では、出家した後の剃髪した入道姿が有名である。今日までの戦国ものの映画やテレビドラマなどの信玄公のイメージはこの肖像画をもとに作られたものが多い。しかし、その治績をたどると、ロダンの「考える人」のような、沈思黙考の武将像が浮かび上がる

▼来年のNHK大河ドラマ「風林火山」放映を契機に、山梨県の豊かな自然や特色ある歴史・文化などを全国に発信しようと地元の官民が協力して「甲斐の国 風林火山博実行委員会」を立ち上げた。戦いに滅法強い信玄像だけでなく、戦国の世を憂い、国際派の、そして家族の情にもろい信玄公も紹介してもらいたい。(甲・SY)

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