コラム

2006/06/16

基本が身を守る(本・JI)


▼以前師事していたジャズミュージシャンの追悼コンサートに行った。昨年12月にすい臓ガンで亡くなるまで指導・演奏に情熱を持って臨み、いつでも周囲に元気を与えるような人だった。コンサートでは、彼が指導していた2つのビッグバンドが演奏した

▼ステージ中央には彼の写真が大きく掲げられていた。演奏を聴きながらその写真を見ていたら、基礎を重視した指導ぶりをフッと思い出した。彼に師事するまでは趣味として好き勝手に演奏してきただけに、基本の反復にはずいぶんと苦しめられたものである。しかし今は、その時に築いた基礎力が自分の糧になっているのがわかる。基礎を発展させれば応用になる

▼厚生労働省が、平成17年労働災害による死亡者数を発表した。建設業は10年前の半分以下で、初めて500人を割り込む497人。しかし全産業の3割を占めており、まだまだ多いといえる。死亡事故の原因のトップは墜落・転落である。足場を確かにすることが大切だ

▼全国仮設安全事業協同組合の小野辰雄理事長は「仮設の安全に力を入れれば事故災害が減少する」と語る。「点検は面倒だが、これさえしておけば災害は減る。安全点検は安心につながる」と声を大にする。安全管理は基本的なものだが、生命に関わるだけに重要なテーマだ

▼1行で497人、前年比16%減と書けば、ただの数字データでしかない。しかし、この一人ひとりに家族があり、それぞれの生活があったはずである。「基本に忠実」こそが自分の身を守る。そしてまた自分を成長させてくれるのかもしれない。追悼コンサートの帰り道、そんな思いを強くした。(本・JI)

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