コラム

2006/07/19

三峡ダムの是非問う(水・NI)


▼総工費約2兆7000億円を投じて中国が長江中流の湖北省宜昌市に建設していた世界最大級のダム「山峡ダム」堤本体が完成、先月から貯水を開始した。供用は2009年。発電能力は、ダム式で世界最大の1820万キロワットに達する。ダムは発電や水運、洪水防止が目的。1994年に正式着工したが、一度氾濫すれば死者数万人を出す暴れん坊・長江の洪水を百年に一度のレベルに制御できるという

▼一方で、長江の環境が破壊される恐れや、三国志の舞台など有名な史跡、名勝が水没する可能性も。また大地震時に堤体が危険にさらされ、濁流によって支障が生じるのではないか等々懸念もある。移転住民約130万は移住を強いられるなど中国の将来を考えるとはいえ、今でも意見は賛否両論だ

▼中国人ジャーナリスト・戴晴氏編の古い論争集『三峡ダム』を読んでみると、いつか大きなしっぺ返しが待ち受けているような気もする。また、ダム湖の地層が弱り地滑りや生態系の破壊を誘発するといった仮設や、洪水被害の拡大につながりかねない土砂堆積問題など、反対派の徹底論究がまとめられている 

▼ダムの効用を一概に否定するのではない。治水事業は天下を治める力にもなるが、失敗は国を衰退させることを今一度認識しておく必要があるのでは。すでにダムは完成している。万全の管理が望まれるとこ

▼もし、日本で企画するのであれば、大規模プロジェクトも当然それなりの効果は期待できる。しかし地道に地域の末端に及ぶ小規模事業に取り組む持続的なプロジェクトの方がより実効性が高いのでは。そして公共事業も理解される。(水・NI)

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