コラム

2006/07/20

揺るがぬブランドを(前・HI)


▼知り合いの建設会社が、創業30年を記念した創業史を発刊した。公共も民間も手がける建築に強い総合建設会社だが、ここ10年の間に、戸建て住宅事業が急伸。地域で確固たる地位を築いた。しかし、経営基盤が固まる前に、社運をかけて受注した工事で赤字が発生、経営の危機に陥ったことなど、平坦ではなかった会社の歴史が記されていた

▼今の会社に育つ転換点となったのは、環境を前面に出した工法と構造材の採用にあった。社長が既存の住宅に満足せず、世界中から住宅に関する情報を集め、ようやくたどり着いた環境共生型省エネ住宅だ。しかし、この工法・構造材仕様の住宅価格は、通常よりも約200万円プラスにかかる。施主にとって、この負担は大きい

▼では同社の営業社員は、施主に対しどのように説明するのか。社長は創業史の中でこう指示している。「最初に言え。『うちは高いですよ』と。そして胸を張ってこの住宅を売れ」。高いと言われれば施主は高い理由を探し、その理由がわかれば、納得して購入すると言う

▼この建設会社は、施主を大手ハウスメーカーと取り合いになったときも、極端な値引き交渉には応じない。「安い住宅は、必要なものを省き、品質を考慮しない部材を使っているからに他ならない」。工法にこだわり、厳選した部材で造り上げた住宅を売っている自負がある

▼創業史を一読してまず感じたのは、社長の強いリーダーシップと確固たる信念だ。「21世紀は本物志向の時代になる。」との眼力。社長の変わらぬ信念と社員の努力が、ダンピングにも揺らぐことのない自社ブランドを築き上げた。(前・HI)

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