コラム

2006/07/25

景観こそ後世への宝(さ・YW)


▼ドイツワールドカップも終わり、静かになるはずのドイツのケルンでは、サッカー以上の騒ぎが市民を2分した

▼ケルン駅前にそびえ立つ「ケルン大聖堂」は、ケルンの誇りであり、ケルンの魂、もっと大きく言えば州のシンボルでもある。駅前の土地柄か周辺の高層ビルで景観が破壊された。さらに市の駅前再開発計画で景観が破壊されるとし、世界遺産委員会はケルン大聖堂を危機遺産リストにのせた。市民は、景観維持と世界遺産維持を掲げ猛反対した。そこで市も計画を撤回、ようやく危機遺産リストから除外になった

▼世界遺産とは後世に残すべき建物、自然などだが、建物でも周囲との景観が不釣合いだからの理由で除外になるものだと初めて知った。つまり当該の建物だけではなく周囲の環境=景観も一緒に評価されているのだ

▼宇治の平等院鳳凰堂の正面写真を撮影すると、右側に景観を破壊するビルが2棟写っていた。筆者はガッカリし、興ざめした。一緒に出かけた同僚2人は気付かなかったらしいが、写真で見るとビルが写るだけにその写真も残念な出来栄えになってしまった

▼今回のケルンの1件は駅前の活性化、つまりまちの玄関口の活性化、都市化といった1つの重要なアイテムを半ば放棄し、ケルン大聖堂という観光的に重要な建物、世界遺産という箔のついた建物を守るということだけではなく、むしろ守ることによる景観を優先にしたのだ。つまり景観こそ後世に残す宝と判断したのだ。筆者が学生期滞在したドイツの州は建物のカラーを周囲と約束し裁判所に届けていた。そういえば100年間の約束であることを思い出した。(さ・YW)

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