コラム

2006/08/21

建設会社がなくなる?(前・HI)


▼ゼロ金利時代も終わり、大企業の業績回復など景気が上向いていると言われる中、地方は取り残されたまま。そのような中、ある地方の有力ゼネコンで、技術者が数10人まとまって会社を辞めたという話を聞いた。いわゆる「リストラ」ではなく、自己都合による退職だ

▼辞めた技術者には、二つの特徴があった。一つは年齢が、20代、30代といった若い年代の人だということ。もう一つは、転職先が他産業だということ。つまり、同業他社にも移らず、建設業界から去っているというのだ。一体彼等に何が起きたのだろうか

▼このゼネコンは地方のリーダーとして、お祭りや運動会など積極的に参加して、地域で中心的な役割を果たしていた。しかし、昨今の建設業や公共事業に対するバッシングにより状況が一変。そうした場で会社の名前が出ると「税金の無駄遣い」といった中傷を受けるようになったという

▼辞めていった若い技術者たちは当初、地元に残り、地域社会から喜ばれる仕事をしようと、道路や橋を造る建設会社に希望を持って入社した。しかし、苦労して造り上げた仕事の出来映えが評価されないばかりか、「無駄」と言われる屈辱と悲しさは想像に難くない

▼今、地方建設業は危機に直面している。それは、予算の削減による公共事業の規模縮小もあるが、次世代建設業の担い手を失っていることだ。身近で川や水路が氾濫したり土砂崩れが起きたとき、建設業に助けを求めても我が街にはボランティアとして協力する建設会社がいなかったーという事態が起きないとは言い切れない。そんな怖さを、若い技術者の大量離職を聞いたときに感じた。(前・HI)

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