コラム

2006/08/30

陰の努力は報われるか(長・YK)


▼中学・高校と同じ学校へ通っていた友人は今、家業を継ぎ大工をしている。本人が言うところの「ありふれた町の叩き大工」。5年程前は「鉋(かんな)や鑿(のみ)を使ったことも無いし、使うような家の注文を受けたことも無い」と苦笑いしていた

▼先日、仲間内で恒例になっている盆の集まりで彼は「内緒にしていたんだけど、実は3年位前から、毎晩鉋の練習をしている」と言う。『削ろう会』という鉋の競技会みたいなものがあって、出場を目指しているらしい。練習の目標は『削りカスを本の上に乗せて字が読める程度』。しかし親父さんの出場許可は「今年も未だもらえない」と頭をかいていた

▼練習開始当初は音がうるさいなどの苦情もあったようだが、近頃は稀に休むと『体調でも悪いのか』と心配してくれるほど近所でも評判のようだ。最近は近所の年寄りから「棚をつけてーとか、ドアノブを替えてーとかいう細かな注文が舞い込んでくるようになった」と言う。無関心なふりしても、近所の人は陰の努力を見ていたようだ

▼長野県では18年7月豪雨により各地で甚大な災害が発生した。雨が一段落した日、長野市内の業者さんを訪問した。休憩室の前を通った時、狭い部屋の中で数人の男性が、仮眠しているのを見掛けた。2日前から皆、夜を徹して市内の河川をパトロールし、土嚢を運んだりしていたと言う

▼災害が起こらなかった地域でも、夜を徹して建設業者がパトロールや防災活動を行い、被害を最小限に抑えたことは知られていない。一般市民が建設業者も防災に寄与しているという事実を周知するまで、あと何年かかるのだろう。(長・YK)

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