コラム

2006/09/08

自殺と格差と地域社会(水・KK)


▼新学期早々なんとも痛ましく、哀しいニュースが飛び込んで来た。1日午前4時50分頃、神戸市須磨区の14階建てマンションの中庭で、そこに住む中学1年の男子生徒(13歳)が死亡しているのが発見された

▼着衣に乱れがなく目立った外傷もなく、母親の「夏休みの宿題が終わっていないとあせっていた」との話から警察は飛び降り自殺とみている。何も宿題くらいで死ななくてもー第三者的には簡単に思ってしまうが、彼は極めて真面目な生徒だったのだろう。部活動の練習には休まず参加していたという

▼8年連続で年間自殺者3万人を超え、日本は世界でもまれにみる自殺大国になりつつある。自殺者の増加については『格差社会の影響』との指摘が多い。「勝ち組」は弱者へのいたわりがなくなり、「負け組」とされる人たちは挫折感を強く感じ、孤立を強いられる

▼昔は、学区内に勤め人以外に農家、商店主をはじめさまざまな職業の家の子どもがいて同じ学校に通っていた。子どもでも環境によって考え方が違う。筆者の小中学時代にも頑として宿題をやらず、先生の再三の催促にも提出しない生徒が何人かいた。そんな生徒は勉強以外に価値観を見い出し、周囲も認めていた。ひょっとして先の男子学生はそんなコミュニティー環境にはいなかったのでは

▼我が国は激しい競争社会に突入した。ひとくちに勝つか負けるかというが、確率は半々と錯覚しやすいが、実際はそうではない。1人の勝者に9人の敗者というのが普通である。昔の地域社会にはどんな人も受け容れる寛容な器があった。格差の是正と地域社会の復活を求めたいと思うのだが。(水・KK)

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