コラム

2006/09/27

過疎の村のビアカフェ(前・HI)


▼新しく出店しようとする場合、施主はどのような立地条件を考えるのだろうか。商圏をリサーチして、交通の要所や住宅地周辺など人や車が集まり、入り込み客数が見込める場所を選択するのが一般的ではないか。そうした意味で、あのお店にたどり着いた時は衝撃を受けた

▼場所は、長野県境に近い群馬県南牧村。これといった産業も観光地もない村で、長野県に抜ける峠はあるが、線形が悪くて狭い悪路。群馬県から長野県に抜ける場合、国道18号碓氷バイパスや上信越自動車道が主流で、同村を通過して越境する車両はごくわずか

▼この「辺境の地」にビアカフェができたと聞いて訪ねた。同村の中心からさらに長野県境に近い関東山地の一角。進むにつれ人家も途切れ、道幅も狭くなる。不安になる頃、旧保育所を改造したというお店が現れた。「なぜ、このような場所に?」との問いにビアカフェのオーナーは「世界から見たら、日本なんてどこも一緒だよ」と、かわした

▼メニューは、地域特産の炭を使った炭入りピザが人気。美味しくて食べやすいとリピーターも多く、オープンから4年、固定客も増えてきた。オーナーは「これからの日本は、田舎が変われば変わる。私の挑戦を見ていただき、田舎でも起業できるビジネスチャンスはあるということをわかってほしい」という

▼「人がしないことをする」これはビジネスで成功する一つの原則でもある。しかし成果が出るかどうかは別問題。オーナーの挑戦は当初、村人にとって無謀と思えた。しかし今年に入り、新たな出店者が村内に現れた。オーナーの想いと行動が、少しずつ村を変えている。(前・HI)

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