コラム

2006/10/10

秋の候に省みる(新・KY)


▼「食欲の秋」。食べ物が少なくなる冬を乗り切るため、体に栄養を蓄えようとする動物の本能なのか、最近、特に食が進む。本能にまかせて、ついつい食べ続け、蓄えが過ぎ、その余剰がお腹のあたりに現れだした

▼最近、よく耳にするメタボリック・シンドローム。ウエストのサイズが男性で85センチ以上、女性で90センチ以上が目安とされる内臓脂肪型肥満。これに加え「血圧」「血糖値」「中性脂肪かHDLコレステロール」のうち2つ以上が異常値で、動脈硬化性疾患の危険性を複合的に高める状態のこと。原因として、睡眠や食事の時間などライフスタイルと密接な関係があるといわれてる

▼今年8月、科学技術振興機構(JST)マウスを使った実験で「食行動を制御する『腹時計』の場所を特定した」とする研究成果を発表した。全ての哺乳動物は通常、視神経に直結して「夜は行動・摂食し、昼は眠る」など様々な行動パターンを24時間周期で制御する体内時計を持つ。ただ、餌が昼間の一定の時間帯に限り得られるような環境に置かれると、『腹時計』に基づく行動パターンに切り変わることが知られている

▼この『腹時計』が、どこに存在するは、これまで謎だった。今回の研究で、脳の「視床下部背内側核」という部分が大きく関与していることが判明した。腹時計が食欲や食行動を支配する仕組みを解明すれば、メタボリック症候群の予防や治療法の開発などにつながると期待される

▼食生活も含め、我々を取り巻く生活環境は今、動物が本来持つ本能との軋轢が大きくなりつつある。自らの不摂生を、本能の責任とせず、改めて生活環境を見直す機会にしたい。(新K・Y)

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら