コラム

2006/10/18

半透明でギャップ発見(本・JI)


▼満員電車内で、鉄腕アトムのブックカバーをつけて文庫本を読む女性がいた。年は20代後半ぐらいであろうか、白いカバーの真ん中で、アトムが笑っている。派手な化粧と服装で電車内でもひときわ目立つ女性と、足裏から火を噴いて飛び立つアトムに、大きなギャップを感じた

▼このブックカバー、白色だが半透明のため、本の表紙が透けて見える。彼女の読んでいる本は司馬遼太郎著の『竜馬がゆく』であった。鉄腕アトムの中身が司馬遼太郎、坂本竜馬。ここにも大きなギャップを感じる。しばらく目を離せなかったが、これは目鼻立ちの整った彼女の美しさに惹かれたのではなく、その「差異」に惹かれたからである

▼最近問題となっているダンピングも、予定価格との著しい差異、他の入札参加者との大きな差異がある。しかし何をもってダンピングとするか、その判断基準がないために業界内部もとまどっているようだ。「いつまで続くのか」との言葉がいつまでも続いている

▼入札におけるもうひとつの話題は入札ボンドである。国土交通省では、東北地方整備局と近畿地方整備局で計6件に対して10月下旬から先行導入する。制度そのものの内容や実施要領骨子なども発表されてはいるが、運用面の詳細が見えてこない。見えるようで見えない様相はまさに半透明である

▼反・透明だった制度が半透明にまで変化したことは評価すべきか。しかし総合評価方式も含めて、入札制度はますます複雑になるばかりだ。「公共事業不要」と唱える一般社会に対してわかりやすく説明できるのだろうか。世間とのギャップを埋めるのは難儀であろう。(本・JI)

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