コラム

2006/10/20

汗の量知るおてんと様(長・EM)


▼財務省「法人企業統計」によると、建設業の営業利益率は17年度1・5%。全産業のそれが3・2%であることから、言わずもがな景気の回復傾向など実感できるはずもない。前年度比は0・2ポイントのマイナス。ピークだった3年度に比べると実に2・5ポイントも減少している

▼規模別では、資本金10億円以上の企業が2・9%であるのに対し、1000万円から5000万円では0・9%、1000万円未満に至ってはマイナス0・4%。建築投資の持ち直しにより業種ごと差異はあろうが、地方、とりわけ土木を主体とする小規模企業の窮状は目に余るものがある

▼また、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、17年度の建設業男性生産労働者の年間賃金総支給額は394万円。ちなみに製造業は475万6000円、全産業では552万3000円。ピーク時からの低下幅は製造業22万円、全産業22万8000円に対し、建設業49万9000円

▼社会資本の整備を担う建設業は、地域貢献という点で、最も目に触れやすい産業の一つと言える。しかし、相次ぐ談合事件や、構造計算書偽装問題などもあり、いまだ信頼を得るには至っていない。むしろ薄らいでいる現状だ。社会的地位の低さや過酷な労働環境。止まらない若年層の建設業離れは、基幹産業の根幹を揺るがしかねない

▼災害時、テレビからは颯爽と被災地に乗り込む自衛隊の姿が繰り返し流れる。しかし、彼らが引いたその後で、黙々と復旧に当たる男達が茶の間に映し出されることはない。流した汗の量を知っているのが、おてんと様だけだとすれば、それはあまりにも悲しい。(長・EM)

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