コラム

2006/11/01

建設業の倒産を考える(本・UT)


▼帝国データバンクが、今年度上半期の全国企業倒産状況をまとめた。倒産件数は4457件で、前年同期に比べ8・4%の増加となっている。このうち建設業は1293件を占め、前年同期比10・4%増という深刻な事態に陥っている

▼帝国データバンクでは今後の倒産動向について、「当面は一進一退を繰り返しながらも、現在の緩やかな増加基調が持続する」と予想している。建設業許可業者数は約54万と言われているが、建設投資が落ち込んでいるのと同じように、今後も減少の一途を辿るのだろうか

▼最近、業界関係者が集う場では、必ずと言っていいほどダンピング受注への危機感を聞く。無理な低価格受注を連発すれば資金繰りが悪化することは、容易に想像がつく。海外に活躍の場があるなどの大手建設会社は別にして、地域密着型建設会社のダンピングは、「それでも資金を回すしかない」という、切ないケースが多いのかもしれない

▼価格が前提だからダンピングすれば受注できる。しかし、ここで改めて考えたい。近年、言い古された感はあるが、「社会資本整備が価格競争至上主義でよいのか」ということを。社会資本整備のための公共工事は、国民の安心・安全に直結する性質を持っている

▼建設業者は社会資本整備に加え、「国土を守る」役目も担っている。こうした役割は地域に根ざしていることが大切だということに、異論をはさむ人は少ないだろう。建設投資の減少や価格競争至上主義により、地域の建設業者がどんどん倒産していく。こうした事態が国土の安全に与える影響は、貨幣価値で計算できるものではないだろう。(本・UT)

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