コラム

2006/11/08

2杯の牛丼について


▼牛丼屋で、牛丼2杯を並べて食べている男性がいた。セットで付いてくる味噌汁も2杯並んでいる。戸外では秋風も吹いているというのに、男性は白いTシャツ1枚で汗を噴き出しつつ、顔をどんぶりに埋めていた

▼通常者の2倍となる食事量、一般よりも極端に薄着の服装。人並みはずれた感覚を持つ「過剰」な人物に感じられた。別メニューではなく牛丼だけを2つ注文している点も極めて重要だ。彼のような人物からは一つの魅力として目が離せない

▼「過剰」な行為は、それを一度行なうことで限界を認識できる利点がある。「もう食べられない」は一つの限界点。ここまで食べることで自分の食事能力の範囲を知ることができる。牛丼2杯を一度に注文するというのは、自らの食事能力レベルを知らずして出来る行為ではない。彼は自分の限界を知っているはずだ

▼限界を知った者は、以降どのように行動すべきか。能力範囲を超えないようにセーブするか、これを超えられるよう努力するか。「食べる食べない」は自分の意思ひとつ。これは食事のみならず、仕事・恋愛・遊びなど人の営みのすべてに言えること。人はいつでも「やるのか、やらないのか」の二者択一を迫られている

▼1杯目を制覇した彼が2杯目に突撃した。世間の健康志向など無関係。周囲を気にせず自らが欲する「牛丼」と対峙する。ひたすらに眼前のどんぶりに向かって前進する。口に入れるー噛むー飲み込むーが同時に行なわれているのではないだろうか。まさにエネルギー満ち溢れる食べっぷり。どうやら「過剰」は人を惹き付ける。ひとつの魅力と言ってよさそうだ。(本・JI)

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