コラム

2006/11/09

安全管理は予防の時代へ(前・MT)


▼「日本は安全に対する取り組みがヨーロッパに比べ20年遅れている」。建設業労働災害防止協会の各県支部分会でこの時期、安全衛生大会が行われているが、ある大会を取材した講習会で、招かれた講師が強調した言葉

▼建築・土木の分野における技術は、世界トップ水準にもかかわず、なぜ安全に対する取り組みが遅れているのか。その講師は国民性の違いからくる危険に対する考え方を示唆する。ドイツ人は「歩き出す前に考え」、イギリス人は「歩きながら考える」。そして日本人は「歩き終わってから考える」、と

▼いわば労働災害が起きてから、あれこれ対策を考える後手の管理だと指摘する。しかしようやく我が国でも、ヨーロッパの先進国の安全管理システムがスタートした。それが今年4月の法改正で職長に対して教育受講が義務付けられた「リスクアセスメント」

▼この概念は現場における危険性または有害性等を事前に調査し、その結果に基づいて災害防止対策を実施することで未然に労働災害を防ぐ、予防の安全管理手法だ

▼建設投資がピーク時の半分以下に減り、加えて厳しい価格競争が経営を圧迫する建設業界。年々労働災害は減少傾向にあるが、依然業種別で大きな割合いを占める建設業。実行予算が請負金額を上回る現場で、利益のほとんど出ない現場で、品質の確保と十分な安全対策は可能なのか。答えは「ノー」である

▼このような状況が続けば、労働条件の引き下げと安全管理の低下は避けられない。工事における最低制限価格の設定には安全管理も加味する必要があるだろう。言うまでもなく人の命ほど尊いものはないはずだから。(前・MT)

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