コラム

2006/12/01

故を温ねて新コンクリ知る(茨城・HN)


▼大手ゼネコンが「長寿命コンクリート」を相次いで開発している。古代のコンクリートをヒントに耐久性を向上させたり、鋼材と同程度の超高強度を実現したりと、目を見張るものがある

▼鹿島建設等が共同で開発したのが、コンクリの寿命を1万年にまで伸ばせる「EIEN(えいえん)」。古代エジプトやローマ、5000年前の中国大地湾遺跡から出土されたコンクリの耐久性を解析。炭酸化という化学反応で表面のすき間が埋められ、腐食を防ぐ技術が使われていた点に着目した。材料に特殊な鉱物を加え、表面を炭酸ガスで覆うことで同じ状況を再現し、耐久性を向上させた

▼一方、大成建設もフランスで開発された超高強度コンクリート系素材「ダクタル」に、特殊な繊維を加えることで耐火性能を大幅に強化した「ダクタルAF」を開発した。大手ゼネコンをメーンに、先人や既存の知恵をもとに素晴らしい商品を創り上げている

▼古代人の技術もさることながら、古代人の考え方に着目する点に驚かされた。学校の5科目に例えれば「歴史」と「化学」。筆者なら「歴史」は丸暗記で済ませ、為になりそうな「化学」に重点を置く、なんて考えてしまいそうだ。だが、長寿命コンクリの例を知って「歴史」は為になる、と思い知らされた

▼どうしても古人の考えは今の考えよりも古いものととらえがちだが、今回のように古人から学ぶべきことは多い。古い考えと新しい考えに垣根を作らず、尊敬の念をもって着目することが、あたらしい発見の第一歩、温故知新につながる。筆者も新聞の原点に帰るとともに、そこから新発見のきっかけをつかんでいきたい。(茨城・HN)

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