コラム

2006/12/21

可借しき建設業(長野・EM)


▼数年前、ちょうどこの時期だったように記憶している。地元業者の例会がはねたあと、社長2人と酒席をともにした。当時は、知事の敢行した入札制度改革により平均落札率が一気に20ポイントも下降。下げ止まったまま一向に上昇の兆しが見えずにいた

▼注しつ注されつの一時はたいそう心地よく、いつになく多弁な自分と酒に酔っていた。話しが予定価格の認識に及んだ時のこと。「これでは70%で工事が出来ると言っているようなもの。橋でも落ちなければエンドユーザーの意識は変わらない」。同意を持って受け入れられると思った筆者の言葉を、社長は諭すようにたしなめた

▼「俺たちはこの仕事に誇りを持っている。取った工事は、幾ら赤字が出ようと責任を持ってやり遂げる。落ちるような橋をつくる業者がどこにいるものか」。社員を切り、賃金を削り、留保を崩しながらの経営を強いられるなか、ともすれば投げやりな言葉を吐きがちな酒席での一言は、深く心に響いた

▼その後、時の知事は県庁を後にした。オウムのように繰り返された「地域に根差した企業に報う」の謳い文句とは裏腹に、パイの奪い合いは全県規模で繰り広げられ、選別ない倒産はとどまることを知らない。依然として70%台で推移する落札率。自助努力では補えない現状が推移する

▼そんな中、トップ交代を期に、途絶えていた行政と業界の現場レベルでの意見交換会が再開した。忌憚ないやり取りが実を結ぶことを切に願いたい。実情を汲み、問題を共有して、直すべきところは直す。なにも一地方に限った話しではない。なによりエンドユーザーが気付いた時では遅すぎる。(長野・EM)

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