コラム

2006/12/22

あなたを愛する人がいる(茨城・KK)


▼ベトナム戦争の戦場で戦死した1人のアメリカ兵士の胸ポケットから1枚の紙片が見つかった。学生時代のクラスメートが「あなたの素敵なところ」とその若者の長所を書き連ねてくれたものだ。その紙片はセロハンテープで補強されボロボロになりかけていたという。かつて耳にし、今でも忘れられない話だ

▼全国の小中学校、高校でいじめによる自殺が相次ぎ、大きな社会問題になっている。また自営業者やサラリーマンなどの自殺も後を絶たず我が国の自殺者は8年連続で3万人を超えた。交通事故の死亡者数が年間1万人に達した1960年代には「交通戦争」と騒がれたが、それより3倍多い自殺者数に対して、社会の反応は極めて鈍いのではないだろうか

▼私見だが、連鎖的に自殺が広まっている一因には報道の仕方に問題があると思えてならない。事実を報道し、原因を追及するのは当然だろう。しかし自殺者の遺書まで公開するのはいかがなものか。「それなら自分も」と免罪符を与え、自殺の連鎖を助長することになりはしないだろうか

▼自殺をなくすには、何より残された家族や友人がどれほど苦しむかを知らしめることだろう。また、いじめに立ち向かった人、自殺を思いとどまった人の経験談、メッセージの報道も有効ではないだろうか

▼先の米兵は友人たちが書いてくれた宝物の紙片を心の支えに戦った。彼は極限状態の中でそれを何度も読み返したのだろう。今、いじめに悩み「いっそ死んでしまいたい」そう思っている人がいるとしたら、もう一度考えて欲しい。親兄弟や友人など「自分を愛してくれる人がいる」ということを。(茨城・KK)

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