コラム

2006/12/26

忘れてはいけないこと(茨城・SI)


▼「忘却とは、忘れさることなり。忘れ得ずして、忘却を誓う心の悲しさよ」。これは、菊田一夫原作の『君の名は』の冒頭のくだりである。現在、再放送中の朝の連続テレビ小説が、ここ半年間の出勤前のひとときの楽しみとなっている

▼ご存じの通り、戦時中の東京・銀座を舞台に、名も知らない男女2人が数寄屋橋で再会を誓い合うラブロマンス。戦後の日本では、ラジオドラマとして人気を博し、放送時間には銭湯から人が居なくなったほど。その後、映画化され、テレビでも現代風にリバイバルされた

▼このドラマでは、主人公の2人を中心に、戦中・戦後の日本の縮図が描かれているが、戦争を知らない筆者にとって趣深く、新鮮なものに映った。戦後の食料難、東京の闇市での抗争、身よりのない子供たちや戦争で引き裂かれた家族、一般庶民と官僚の階級格差、目覚ましい経済復興を遂げていく日本の社会が背景にある

▼一方で、こうした厳しい時代の中を、明日に夢や希望を抱きながら、ひたむきに、ひたすら懸命にその日1日を生きていく人びと。グローバル化した現代社会との違和感を感じながらも、人と人とが密接に関わりつながり合う、古き良き日の日本がそこにはあった。瞼を濡らす場面だ

▼この1年を振り返ると、全国的に談合事件が相次ぎ、知事の贈収賄に発展し、さらに事態は拡大しているようにみえる。社会には最低限守らなければいけないルールがある。人として、企業として、決しておろそかに考えてはならない。建設業界が文字どおりの手弁当で社会性を強調しても、こうした事件が足を引っ張ってしまう現実は深刻だ。(茨城・SI))

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