コラム

2007/02/19

景観形成の原点は「心」(埼玉・YW)


▼過日、北陸の小京都といわれる加賀百万石の城下町金沢市を訪れた。まず、兼六園、金沢城の観光マニュアルコースを早目に片付け、話題の美術館を周った。どちらかと言うと、見て楽しみ、さらに観光施設の建物にため息をつくというより、その場に身を置くことで心が安らぎ、想うものがある場所となる武家屋敷通り、茶屋街に足を入れた

▼狭い石畳に木造の低層住宅、長く続く土塀と用水が周囲を流れる。水音が耳に心地良さを伝える。茶屋街は繊細かつ優美で華やかさの中に、歴史の息吹を伝える。その町並みでは、過去の先人達のつくりあげた苦労とそれを残すことで多少生活は不便でも、我慢し奉仕しようとする精神と愛着を感じる

▼さらに、一定のルールを決め、まち全体の景観を崩さないようにしていこうとする未来への約束もあるのだろう。武家屋敷通りのすく背後には現に、北陸最大の商店街の香林坊が迫っている。しかし、1歩裏に入るとタイムスリップしたような江戸情緒が残された景観が存在し異彩を放っている

▼今、全国各地で景観法に基づいて景観計画などを策定中だ。景観を損なわないようにさまざまなルールを設定し、景観保全に向け動き出している。景観については、誰もが賛成し、町並み保全は当然だと言う。とりわけ外部の人間、観光客に対しては保全してください、町並みを見にいくので綺麗にしてくださいなどと自由な表現で勝手に発言する

▼しかし地域の当事者はまさしく不便を受入れ、保全維持のコストを承知で守ろうとしている。景観形成の原点は過去の心を理解し、それを守ろうとする心に他ならないのだが。(さいたま・YW)

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