コラム

2007/02/26

義父のキャッチフレーズ(山梨・CT)


▼日用品には素晴らしい営業マンがあふれている。たとえば「熱さまシート」。そのまま商品名が使用用途まで語ってくれている。トイレの消臭剤「トイレその後に」は使うタイミングまで。「しみとりーな(シミ抜き剤)」つい勧められるがままシミ抜きしたくなってしまうから不思議

▼これらは小林製薬の商品だが、この会社「ネーミング力」では定評がある。我が亭主のように、食器洗剤も柔軟剤も区別のつかない相手にはダイレクトな商品名はありがたい。商品名は、商品紹介であり、キャッチコピーであり、優秀な営業マンでもある

▼先日、義姉がお義父さんの思い出話をしてくれた。家ではやさしい父親、会社ではまじめなサラリーマン、お酒と野球が大好きだった。晩酌をしながらよく言っていたそうだ。「やるっきゃない、やるっきゃない」と。家族の前では弱気な姿を見せなかった。「やるっきゃない」そう自らに言い聞かせ、奮い立たせていたのだろうか

▼義父はすでに他界している。だが言葉通りの人生を過ごしたからこそ、今では義姉や義兄が真似して使っている。私は生前の義父を知らない。仕事が上手くいかない時、「やるっきゃない」と呟いてみる。そうすると会ったこともない義父と向かい合っているようで背筋がしゃんとする

▼選挙イヤーである。立候補者のキャッチフレーズもお馴染みになった。「聖域なき構造改革」「もったいない」「美しい国」立派な志だ。しかし、これら心地いい言葉は飾りだけになってはいないだろうか。政を司る方々には優れた商品名のようにわかりやすく、義父のように全うする姿勢を持ち続けていただきたい。(山梨・CT)

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