コラム

2007/04/24

地方鉄道の残る道(茨城・NI)


▼茨城県石岡市と鉾田町を結ぶ鹿島鉄道が先月3月31日で83年の歴史に幕を閉じた。下り線の終着駅である鉾田駅では、市民団体や県内外から人々が訪れ鉄道との別れを惜しんで最終列車を出迎えた。市民団体の「ネバーギブアップかしてつ」をはじめ多くの鹿鉄ファンが存続を願い、近隣住民の署名活動や鹿鉄の重要性を何度となく訴えてきた

▼近年、自家用車の普及、高齢化の波に押され、路線廃止や間引き運転などが行われ、公共交通サービス低下が進行している。いま自治体では、第三セクターに委託したコミュニティバスやデマンドシステムの導入が加速化している

▼岡山県に本拠を構える両備グループの小嶋光信社長の言葉が頭をよぎった。「その路線が走っている地域の人々が本気で考え、動かなければ、私がどんな努力をしても結果は変わらない」という言葉だった

▼鹿島鉄道は、旧国鉄や地方鉄道から払い下げを受けたレトロな車両が走っているのが人気。最終日も全国から鉄道ファンらが最後の雄姿を見に訪れた。親子三人づれの男性は「妻が昔乗っていた夕張鉄道の車両が走っているので会いに来た」と車両には乗らず、しばらく眺めていた。同鉄道は大正13年に営業開始。昭和42年に記録した300万人をピークに利用客の減少。平成17年には77万人に激減。県や沿線自治体の財政支援を受けたが経営不振に陥った

▼生活に便利は優先される。しかし、不便な時代はそれはそれで温かさや発見、向上心などがあったのではないだろうか。日本を見据えてきたこの路線のレールは大勢の「ありがとう」の声を残して静かに途絶えた。(茨城・NI)

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