コラム

2007/05/07

ツバメに教えられた事(群馬・HM)


▼桜の花と入れ替わりに、我が家にツバメがやってきた。二羽のツバメは夜の間は玄関扉の上で寝て、昼間はせっせと巣作りに精を出す。しかし悲しいかな、汚れに強いと言われる光触媒コーティングの外壁。せっかく貼り付けた泥は、ポロポロと落ちていく

▼実はこの「つがい」のツバメ、昨年も来ていた。そして同じように空しい努力を繰り返し、結局、巣を完成させられないまま旅立っていった。こんな家はこりごりだろうと思っていたら、今年もなぜか来てくれた。実に夫婦仲が良い

▼さすがに気の毒になってきたので、何とか巣が作れるように知恵を絞った。軒下に突っ張り棚を垂直に取り付け、そこにベニヤ板を貼り、簡易的な木の壁を作った。ベニヤならば泥もへばりつき易いだろうと考えたわけだ。完璧だと思ったが、肝心のツバメが使ってくれない。取り付けて数日が経つが、未だに見向きもしない。自然というものはなかなか人間の思った通りには動いてくれないものだと痛感する

▼河川整備などの時に安全の指標として百年確率というものがある。百年に1度の大雨でも耐えられるという考え方。しかし、この確率自体が正確ではなくなっているという見方がある。温暖化の影響による気象の変化が原因。これが本当なら、人間が考えた計画を簡単に、根底から覆してしまう

▼我々人間には、その時その状況で考えられる最善と思えるものを選択していくしかない。しかし、自然はそんな人間に気を使ってはくれないのだ。筆者の努力を気にも留めないツバメたち。むなしい作業を繰り返すツバメに、人間の独りよがりな理屈を見たような気がした。(群馬・HM)

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