コラム

2007/06/22

君、君たらざれば(茨KK)


▼またぞろ多発する不祥事の嵐ーと言ったら大げさだろうか。社会保険庁による年金受給者記録漏れ問題、大手介護会社の不正申請問題、最大手英会話学校の受講生との契約トラブル・・・。お役所も大企業もいい加減とあっては何を信用すればよいのだろう

▼日本の武士道は鎌倉初期に端を発する。武士道の中核に忠義、忠誠の概念があることは言うまでもない。一般的には滅私奉公として、己を殺して主君や御家のために尽くすことと見なされ、「君、君たらずとも、臣、臣たるべし」ーいかなる時も絶対服従を強いられるものと考えられがちだ

▼固定的な身分社会と思われていた江戸時代だが、実は藩主が家臣に更迭される「主君押込」も行われていた。藩主に悪行、暴政が重なり、諫言するも聞き入れられない場合、家老・重臣の指導のもとに家臣団が藩主を軟禁、改心困難と判断された場合は隠居させ、新藩主を擁立する行為。1729年の久留米藩有馬家、岡崎藩水野家(1751年)、加納藩安藤家(1755年)などが記録に残っている

▼不祥事を起こした企業や組織が回復不能のダメージをこうむる原因の多くは一般的に内部告発に例が多い。倫理的に疑問があり、陰湿なイメージを受ける内部告発よりも、組織内において堂々と諫言・異議申し立てができる環境のほうが健全であることは言うまでもあるまい

▼耳障りであっても、部下の進言に真摯に耳を傾ける。後に遺恨を残さないことはもちろんだ。「君、君たらざれば、臣、これを諫む」。グローバル化の時代だからこそ、日本古来の武士道に見るそんな風土が求められるべきだと思うのだが。(茨城・KK)

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