コラム

2007/08/29

公園から宇宙への体験(東京・JI)


▼休日に東京都府中市の市立公園に出掛けた。目的は大きな池での水遊び。息子と一緒にざぶざぶと池を歩きまわり楽しんだ。この公園は、週末になると多くの家族で混み合う人気スポット。こうした市民の憩いの場を創出することも、公共事業の役目のひとつである

▼公園内にあるプラネタリウムにも足を踏み入れた。半球状の天井に、今の時期に見られる星座が見事に映し出される。職員による解説が終わると、次はデジタル映像番組が始まった。タイトルは宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』

▼映像は、主人公の少年ジョバンニが異空間に呑み込まれるところから始まる。天井の星空がぐるりとねじれる時には、床に固定されているはずの座席も宇宙に吸い込まれていく感覚になる。観客も彼とともに行動しているわけだ。やがてジョバンニと観客は、汽車の中で揺れに身をまかせる。友人カムパネルラも乗っている。窓の外では白鳥が川に沿って飛んでいた

▼汽車は青く光るリンドウの花畑を抜け、真っ赤に燃えるサソリの火のそばをゆっくりと通り過ぎる。そして白い光を放つ十字架へたどり着き、走り去る。物語は、実は亡くなっていたカムパネルラが突然いなくなるという結末を迎える。その物悲しさと星の輝きが交錯するような、臨場感あふれる美しい作品だった

▼宇宙の神秘と宮沢文学に触れ、有意義な時間を過ごすことができた。しかし、暗がりが怖かったのか息子には不評。さらに妻は、ぐるりとねじれた最初の映像から最後まで「乗り物酔い」だったという。是非とも再訪したいのだが、どうやらその際は一人きりでの見学となりそうである。(東京・JI)

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