コラム

2007/10/15

ポピュリズムの失敗(東京・KK)


▼新作映画の初日舞台挨拶で、主演女優が不機嫌な表情や態度を取ったことが話題となった。司会者からの問いかけにも「別に」「特にありません」と冷たい反応。出演者全員で作品の横断幕を掲げた時も一人で腕組み。各メディアもこれを大きく取り上げていた

▼「生意気だ」「まだ子供」と批判する意見もある一方で「大物の証」「女優然としている」とするなどさまざまである。彼女を、大口を叩くことで有名なボクシング3兄弟と「同類」と捉える人もいる。暴れたわけでもなく、ただ何もしなかったことが注目されるというのは、私見だが確かに大物かもしれない

▼大嶽秀夫著「日本型ポピュリズムー政治への期待と幻滅ー」(中公新書)では、ポピュリズムを「マスメディアを通じて支持を調達する政治手法の一つ」と定義。リーダーが大衆を引っ張り、敵に向かって戦いを挑むヒーローの役割を演じる「劇場型」政治スタイルを指している。最近ならば、小泉純一郎元首相が象徴的だろう

▼ポピュリズムの場合、リーダーは「普通の人々」の一員であることを強調するという。このあたりが、問題の女優やボクサーとは違うところだろうか。自らカリスマを謳う者に対し、大衆はあきれかえるだけである。人々の心を掴むのは難しいこと。ましてや個人によってヒーロー像は異なる

▼人はカメラの前に立つと自分を演出してしまうようだ。今回の女優は、舞台上でアウトローを演じることはできても、なすべき役割を演じることはできなかった。結果として、マスメディアを通じ多くの批判を調達した。大衆の支持路線とは少しズレてしまったようだ。(東京・JI)

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