コラム

2007/10/22

公のサービス精神(新潟・KY)


▼10月から郵政事業が民営化され、日本郵政グループ?による業務がスタートした。持ち株会社となる「日本郵政」と、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険、郵便事業、郵便局の4つの事業子会社に分社化されたが、グループ全体の総資産は約300兆円にのぼる巨大企業となった

▼官営による日本の近代郵便制度が創設されたのは、今から130年以上前の明治4年。創設者は「日本郵便の父」と呼ばれる前島密。前島は、明治維新後、新政府の命により渡英し、郵便制度を学んだ後、日本で全国一律料金の郵便の仕組みを築いた。郵便制度以前、日本では、民間の飛脚制度があったが、料金や配達時間が地域によって大きな格差があるという問題を抱えていた。このため、民間に変わる「利益優先ではない、公共サービスの精神」による郵便制度を目指した

▼「縁の下の力持ちになることを厭うな。人のためによかれと願う心を常に持てよ」という信条のもと、前島は郵便のほかにも、江戸遷都や、国字の改良、海運、新聞、鉄道、教育、保険などの分野で、日本の近代化を進める過程で多くの功績を残している

▼郵便事業を民営化することにより、巨大な資産を活かすための収益の確保が課題となる。そのため公共的なサービス意識よりも、企業としての利益や効率性が優先され、国民の利便性などが後回しにされるのでは、という危惧もある

▼最近、年金問題などで公共サービスに対する国民の信頼が大きく揺らいでいる。郵便事業が官営、民営のいずれにしても、前島密の志、公共サービスの基本精神、を、忘れずに引き継いでもらいたいものである。(新潟・KY)

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