コラム

2007/12/05

見えないものを見せる(東京・JI)


▼学生時代、ファミリーレストランでアルバイトをしたことがある。冷凍ハンバーグを焼いたり、袋から皿へスープを移して電子レンジで温めるなど、調理作業そのものはあまり難しくはなかった。しかし問題はランチタイム。狭いスペースに人と食材と皿が怒号とともに右往左往する。厨房はまさに戦場と化している

▼そんなファミレスのメニューに変化が訪れている。健康志向がブームとなった頃からカロリー数の表示はあった。最近は「何処の誰がどんな風に作ったか」といった素材の説明や環境対策までも記載している。「安全・安心・おいしい」を前面に打ち出すことで、企業価値を高める狙いがある

▼建設業界でも、住宅には「住宅性能表示制度」によって構造やメンテナンス性、空気環境など住まいの機能を評価するシステムがある。しかし、18年度着工戸数に対する性能評価の交付はわずか19%。制度そのものの認知度がまだ低いのかもしれない

▼土木はどうか。落橋予防に向けて橋梁点検の制度化に向けた動きがある。橋梁の図面や点検結果、製作・補修履歴をデータベース化するという。どうせならば各橋梁に看板を立てて「橋梁性能」を表示してみてはどうだろうか。性能が低ければ、地元から補修するよう声が上がるのではないか。公共事業に対する偏見にも変化も出るだろう

▼現在は、何事においても性能を公表し価値を明らかにすることが社会から求められている。いわば透明性が問われる時代である。やがては企業や成果品だけの話ではなく、人そのものにも性能や品質を表示することになるのではないだろうか。社会の要求には際限がない。(東京・JI)

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