コラム

2007/12/06

リモコンでは伝わらない(山梨・CT)


▼テレビゲームは苦手だ。小さなリモコンで画面のキャラクターを操りながら飛んだり、跳ねたり…。つい操作を忘れてリモコンだけを上下に振っていたりする。家庭用ゲーム機として任天堂のファミコンが登場したのは1983年。その後も続々と新機種、人気のソフトが発売され、社会現象になったが興味は持てなかった

▼2006年に発売された「wii(ウィー)」はそんな市場を開拓した画期的なゲーム機だ。リモコンの動きを本体が検知するので、自分の動きがそのまま画面のキャラクターに伝わる。テニスゲームなら実際にテニスラケットを振るようにリモコンを動かせばいい。この単純な操作と使い易さが女性や中高年層にもうけた要因であろう

▼「新しい遊び方」という任天堂のアイディアと、その要望に応えた部品メーカーの努力には感心するばかりだ。双方の熱意が「体感ゲーム」という新しいジャンルを生み出した。製造に携わった部品メーカーは株価も上がり、業績も伸ばしているという

▼19歳の時、同居していた祖父が亡くなった。自分のベッドで眠るように息を引き取った。当時はまだ自宅葬で、布団に横たわる祖父はまるで昼寝でもしているかのよう。実感も湧かないまま慌ただく葬儀を終え、一人、進学先の東京に戻った

▼1カ月後、法要のため帰省する列車の中で、家族に買ったお土産が一つ多いことに気づいた。亡くなった祖父の分まで買ってしまった。とんだ粗忽に呆れながら、泣けてくる。この時、初めて祖父はなくなったのだと痛感した。昨今、体感は電源を入れれば味わえる。でも、実感は一つ余ったお饅頭に詰まっている。(山梨・CT)

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