コラム

2007/12/19

父と愛犬と私と(群馬・AN)


▼筆者が飼っている愛犬『チビ』はまもなく17歳を迎える。人間で言えば90歳を越えている。群馬県の我が町では17歳を越えたペットに対する表彰制度があるらしく、ひそかにチビの殿堂入りに期待を寄せている

▼思えばチビを飼いはじめたのは、自営業の亡き父が得意先から生まれたばかりの子犬を貰ってきたから。父が商談を得意先と進めていた際、父の足もとをウロウロし、なぜか初対面の父になつき、非常にかわいげのある仕草であったため、引き取ったと聞いていた

▼筆者が入社して間もなく、脳疾患で父が他界。59歳という短い生涯であった。公務員であれば、1年後に迫った退職を前に、幹部として部下の育成などにあたっている年齢。今でも心臓マッサージが行われている父の姿が脳裏に焼きつき、心電図からの「ピー」という冷たい非情な音声も耳に残って離れない

▼心肺停止となったのち、母も2人の弟も皆、涙を流していたが、筆者は涙を流さなかった。その頃の筆者には『男は涙を流しては駄目』という信念があったからだ。それは亡くなった父が生前口にしていた言葉だった。今思えば、自分の気持ちにうそをつかず、あの時、思い切り涙を流せば良かったと後悔している

▼父がいったん、我が家へ戻ってきた時のチビのようすは少し変わっていた。父が亡くなったことを悟っていたかのように、元気がなく、目にはうっすらと涙を流していたように思えた。今月12日は父の誕生日だった。いつもは位牌を前に酒を酌み交わすのだが、今年はチビにも特別にジャーキーをあげ、チビの17歳の誕生日を祝ってあげたいと思っている。(前橋・AN)

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら