2007/12/28
昭和は遠くなりにけり(茨城・KK)
▼一昨年、大ヒットした映画『ALWAYS・三丁目の夕日』。前作を凌ぐ秀作との触れ込みの続編が上映中と聞き、映画館に足を運んだ。人気作品のため立ち見覚悟だったが、仕事帰りに最終上映時間に飛び込んだためか観客はまばら。しかもほどんどが高齢者。49歳の筆者が最年少と思われたほど
▼筆者は原作者・西岸良平氏の単行本『三丁目の夕日・夕焼けの詩』(既刊54巻)のほか『鎌倉ものがたり』(同24巻)はじめ、氏の作品の大半を所蔵している。ほのぼのとした温かみのある作風は、古き良き時代の原風景を再現してはいるが、単に懐かしさだけを追及しているのではない
▼筆者の経験に限って言えば、著名な原作の映画化にはどちらかと言えば期待はずれが多い。数100ページもの作品をわずか2時間程度に集約するのには無理があるのだろうか。膨大な短編集である西岸氏の原作をどう一本の映画に凝縮するのか、2年前の前作を観る際、楽しみの反面、不安もあった
▼昭和30年代の街並みや風景を見事に再現するとともに当時は当たり前だった近隣の人々との連帯感を、笑いと涙で表現。「世の中、甘くはないが、努力を続けていれば、人生いいことがある。捨てたものじゃない」続編には前作以上にそんなメッセージを感じた
▼過日、某テレビ番組の「日本の餓死者年間50人」というニュースに驚愕した。最近、格差の拡大が話題に上らない日はない。万一、格差が固定され、親から子へと引き継がれることになれば新たな身分社会にもなりかねない。「努力すれば報われる」ーそんな昭和の時代はもはや古典の世界になってしまったのだろうか。(茨城・KK)