コラム

2008/01/24

重さ増す経営者判断(群馬・HI)


▼地域の中心的存在の建設会社が倒産したのは昨年の今頃だったろうか。確かに多額の有利子負債を抱えてはいたが、年間にそれなりの受注額は確保していたし、倒産後の地域経済に与える影響を考えれば「倒産はない」と思っていた企業だった

▼昨年は、その後も地域の中核を担う建設会社の倒産が相次いだ。その引き金を引いたのは、取引金融機関。公的資金の投入で体力を付けたり、また、地域の金融機関の再編がここへ来て加速したこともあり、不良債権処理が進んだ。資金の供給が途絶えれば、多額の負債を抱える会社が生き残る選択肢はない

▼そして、あまり表には出ないが、会社を整理して静かに業界を去った会社も多かった。「この街にこれからも住み続けたい」。知事表彰など優良工事表彰の常連でもあるこの会社の社長は、そう言い残して指名辞退願いを出した。資金に余力があるうちに、社員に退職金を出して、社長自らの今後の資金も多少確保できた

▼また、建設業は続けるが公共事業から撤退した会社も目立った。「公共事業は年間に一本受注できるかどうか不安定だ。さらに、お決まりの電子入札、電子納品、総合評価などは費用対効果が芳しくない。加えて予定価格が下がっているから受注しても赤字になる」。公共事業の受注環境は年々厳しさを増した

▼建設会社は、荒れ狂う波に漂う一艘の小舟のようだ。今、この逆境を克服することはできない。オールを持つ船員も少なくなり、この波の上で船を維持する体力も燃料もない。しかし、何とか陸に上がって、別の道を歩む選択肢はある。その判断は船長、つまり経営者にしかできない。(群馬・HI)

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