コラム

2008/02/06

大きな父の思いで(埼玉・AO)


▼埼玉県ときがわ市の萩日吉神社では3年に1度、流鏑馬の奉納が行われる。今年も1月に晴天、寒風の中行われ、多くの観光客で賑わった

▼同社で行われる流鏑馬は、平家政権打倒を掲げる源氏の先駆けとして上洛を果たした木曽義仲の家臣と伝えられる明覚郷の3氏と大河郷の4氏が、天福元年(1233年)に奉納したのが始まりと伝えられている伝統行事。神社近くの特設馬場を神馬が駆け抜ける「朝まとう」、午後には矢を射る「夕まとう」が行われる

▼もう、30年ほど前になるだろうか。父に手を引かれ流鏑馬を見に行ったことがある。馬が見たいという筆者の言葉に反し父は、馬場から離れた位置に陣取る。そこからは疾走する馬の姿は、小さくしか見えなかった。幼心に「どうしてこんなところに」と思ったものだが、父がこの場を選んだ理由がすぐに分かった

▼「夕まとう」が始まると、様々な方向へ矢が放たれる。すると、目の前に矢が飛んできた。すかさず父は矢を掴み渡してくれた。周りにいた人たちからは、「すごいね」とか「ほしいなぁ」などといった言葉が聞こえてくる。「だからここだったんだね」と聞くと、父は少し笑ってうなづいた。帰り道、少し前を歩く父を「すごいなぁ」と誇らしく思ったものだ

▼そんな父とは反目した時期もあった。しかし、これといったものは残してくれなかったが、多くの思い出を残してくれた。自分にも子供ができ、ふと考える。父として、この子に何をしてあげられるのだろう、何を残してあげられるのだろうか。また、大人たちは、次世代の子どもたちに、何を残してあげられるのだろう。(埼玉・AO)

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