コラム

2008/02/20

利便性か景観保持か(埼玉・YW)


▼先日、広島県の宮島に観光で出かけた。宮島口からフェリーで宮島に行くのだが、なぜここに橋を1本架けないのか不思議でならなかった。しかし、神々が宿る、景観性、または何らかの理由があるのだろうと同行者も口々に

▼理由はともあれ、島にフェリーで渡り、海から地上を見て、風に吹かれることは旅に来たという風情は感じる。そういう意味ではフェリーで島に行くのも一興かもしれない。しかしながら、観光客相手の商業関係者にとっては日常島に行かなくてはならず不便であり、きっと橋の1本は「欲しい」と思っている人もいるに違いない

▼しかし、利便性が第1でなくてはいけないということはない。むしろ、現代的な利便性を捨てて不便性を守るという精神が残っていることもすばらしい選択肢だ。12年ほど前、同様な経験をしたことを思い出した。スイスのジュネーブにあるレマン湖のほとりには有名女優の墓があるなど墓地、散歩道、観光コースが多い。湖に橋を架けようとする行政に市民が反対していた。その数カ月後、奇しくもテレビや新聞の国際面で市民の反対によって中止したことが報じられた

▼市民の湖への愛着、反対理由の景観が崩れるというその景観保持への高い意識とパワーを感じた。わが国は景観法が施行され日が浅い。景観法ができなければ野放しになり、制定しなくてはいけないという背景もあり、市民の景観への意識の違いを感じる

▼宮島にはどのような理由で橋が架からないのだろうか。瀬戸内海に「ふわっと」存在する島こそ素晴らしい。利便性や経済性ではないという、超越したものがあること強く感じた。(埼玉・YW)

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