コラム

2008/03/26

ユーザー本意の現場づくり(群馬・HI)


▼過日、子どもを連れて、橋梁の架設現場に行った。深い谷に架けられたメタル橋のシルエットは、午後の斜光に輝き、まるで雨上がりの虹のように美しかった。子どもが「橋を近くで見たい」と騒ぎ出した。「工事中だから危ないよ」と諭すと、現場にいた一人の作業員が気付き、「ここからならよく見えるから」と、仕事の手を休め、ロケーションを確保してくれた

▼聞けばこの作業員は、現場の隣町に住む現場責任者。父親と同じように建設業の職人となる道を選んだばかりか、同じ建設会社に就職。話す姿からは、本当にこの仕事が好きで、やりがいと誇りを持っている気持ちがほとばしっていた

▼その時、地元の人と思われる初老の男性が、現場について教えてほしいと尋ねてきた。現場の彼は、会社名の入ったワゴン車から図面を持ってくると、路上に広げて説明を始めた。二人は道路にひざをつき、彼がなぞる指を目で追う。男性の不安そうな表情が消え、納得した表情に変わった

▼今、現場監督に求められることは多い。安値で受注した工事に対し、上役からは「何とか工期を縮めて利益を出せ」と言われ、職人からは「工期がきつい」と泣かれる。この板挟み状態では、仕事に対する誇りや信念もぐらついてしまうことも多かろう

▼仕事を進める上で、数多くの課題に直面する。特に会社の指示と現場の状況が異なる時は、現場をあずかる現場監督の悩み所だ。彼は、公共事業のユーザーをしっかりと見て仕事を進めている姿勢が頼もしい。問題が発生した時、関係者間の調整も、ユーザーの視点でスムーズに対応している姿が見えたような気がした。(群馬・HI)

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