コラム

2008/04/11

日本の心・源氏物語(茨城・KK)


▼紫式部による世界最古の長編小説『源氏物語』が記録の上で確認されてから今年2008年はちょうど千年にあたると言われる。その後さまざまな形で日本文化に影響を与えたとされる作品の生誕千年紀に今後、京都を中心にさまざまな催しが予定されている

▼日本の古典の中で『源氏物語』ほど多くの読者を抱えてきた作品も珍しい。ある程度の規模の書店や図書館なら『源氏物語』関係だけでひとつのコーナーができているほど。『源氏物語』を研究する専門家や作家、市民グループの数は計り知れないだろう

▼『源氏物語』は全54帖からなる大長編物語で、我が国古典の最高峰としてそびえ立っている。12帖の『須磨』あたりで挫折する人が多いことから『須磨返り』という言葉があるように全巻を読み通すのは容易なことではないようだ。世界随一のベストセラーと言われる『聖書』が、1日3章(約15分)ずつ読めば、ちょうど1年で読破できると聞き、20数年前に挑戦したことがある。結果は3分の1あたりの『歴代志上』であえなくダウンしてしまった

▼「愛憎」「背信」「別離」などは文学に限らず、芸術一般の追求する主題のひとつに違いないだろう。『源氏物語』では光源氏が父帝の后・藤壺と過ちを犯し、また源氏の正妻・女三の宮が青年柏木と密通し、不義の子・薫を産むなど「愛欲」「苦悩」など人間の避けられない生の営み、人間の真実の姿が全篇を貫いている

▼日本人の心が失われていると言われて久しい。それは「もののあわれ」と言い換えることもできるだろうか。源氏物語千年紀を機に古典に立ち帰るのも一興かもしれない。(茨城・KK)

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら