コラム

2008/05/07

現説は貴重な機会(東京・UT)


▼現場説明会。略して現説は、公共工事の世界で、死語になってしまった感がある。入札前に参加者が顔を合わせることが談合につながるといった理由から、原則廃止にしてしまった発注者が多いのだ

▼ただ現説は、廃止される以前から、その名の体を成していなかったと言っても過言ではない。現場説明会という名称が付いてはいるものの、施工条件を説明するために現場へ行くことはほとんどなく、実際には役所の中で設計図書を渡すことを指していた

▼もし、本来の意味での現説が行われていたらと空想してみる。発注者と入札参加者が揃って現場に足を運び、設計図書では不明瞭な点について、その場でいろいろな質問が飛び交う。「ここは図面と少し違っている」といった指摘から建設的な議論が飛び交い、そこから何かが見えてくる

▼そもそも設計図書と現場とでは、違いがあって当たり前。平らな図面を持って立体的な現場に足を運び、技術者がその目で確かめる。そのシチュエーションで、総合評価方式の技術提案を発想することもあるだろう。随分と前から業界で問題になっている着工前の設計照査や、それと連動した設計変更を解決するための糸口も、現説からつかめるかも

▼談合と現説の関連性は、指摘される通り、確かにあったのだろう。ただ、もうこれからは談合をしないという前提で制度を模索していくべきではないか。公共工事の入札手続きは、市民に良質な社会資本整備を提供することを、最優先事項に据えることが肝要だ。談合防止の観点から現説を廃止するといったロジックには、本質的な観点が置き去りにされている気がしてならない。(東京・UT)

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