コラム

2008/05/15

聞け!建設業界の叫び(群馬・HI)


▼静かだ。道路特定財源の暫定税率失効や原油高をはじめとした原材料費高騰など、建設業界にとって死活問題が山積しているというのに。テレビなどマスコミは、国会論戦を派手に報道し、テレビのコメンテーターは口角泡を飛ばして自説を叫ぶ。しかし、である。地方建設業の現場は一見、静かなのだ

▼地方で、公共事業の受注割合がほぼ10割の中堅建設会社。高い技術力で知られ、優良工事表彰の常連。社長も団体活動に積極的に関わっていたが、最近は姿をすっかり見なくなった。聞くところによると、受注がピーク時の3分の1に減少し、廃業の時期をうかがっているという

▼別の建設会社。この会社は社長が代わり、30歳代の若い代表が誕生した。これまで土木業中心だったが、指定管理者制度に積極的に参入するなど、新分野進出に意欲的に取り組んだ。しかしこの社長も「建設業を辞めたい」と漏らす。「足の引っ張り合いだよ。この業界に未来はない」

▼人は絶望の淵に落ちると、声を発することができなくなるという。以前、アフリカの貧困をテーマにしたテレビ報道で、痩せこけた手で生後間もない幼子を抱く女性に、インタビュアーがマイクを向けて「なぜ、現状を変えようと行動しないのか」と問うと、大きいばかりで生気のないその目からは涙が溢れた。口からは嗚咽が漏れただけだった

▼道路特定財源の暫定税率復活を求めた地方からの一連の動きも、役人や議員だけの主義主張に聞こえてしまったのは、屈折した見方だろうか。中央の政界や官僚、そして一般の人には、耳を傾けて聞いてほしい。地方建設業の絶望的な声にならない叫びを。(群馬・HI)

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