コラム

2008/05/20

届かない現場の声(茨城・HN)


▼構造偽造問題を発端に、昨年6月20日に改正された建築基準法。品質を向上し、国民の信頼を回復するため改正されたわけだが、実務レベルでは現場知らずの法改正にうんざりする声が聞かれる。手続きの煩雑さと膨大な補足資料、審査料金の値上げなど。結果的に、品質の向上どころか、逆に品質の低下につながってしまうことも

▼茨城県内の某設計事務所では、延べ床面積2800?の集合住宅の適合性判定をもらうまで、構造計算書が2000ページにおよぶなど、大変な労力と時間がかかったという。それでも品質向上につながれば、まだ救いもあるだろう

▼しかし実際には、手続きの煩雑さや膨大な補足資料だけが発生し、構造強度基準、耐震基準事態の技術的内容は、改正前と後で内容的に何も変わっていないのだという。さらに審査料金は改正前よりも2倍以上値上がりしたという現実

▼このような建築確認申請の停滞は、住宅着工数の激減へとつながり、いまだに減少傾向にある。国土交通省発表の住宅着工統計(平成20年2月分)でも、新設の住宅着工戸数は8万2962戸で前年同月比5%減と8か月連続の減少。新設の住宅着工床面積も、前年同月比8・2%減(682万2000?)と、8か月連続の減少となっている

▼急きょ作られた法の改正後、1年が経とうとしているが、繰り返される法の修正で基準自体がまだ定まっているとは言えない。正しい手続きを行う審査機関側も、実際のところは判断基準に迷う状態が続いている。国は、世論や机上の論理だけでなく、実務にあたる現場の意見反映を怠っていまいか。(茨城・HN)

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