コラム

2008/06/03

褒めることの効果に驚き(茨城・KI)


▼「他人から褒められると、人の脳は現金を受け取った場合と同じ部位が活性化する」。自然科学研究機構生理学研究所(愛知県岡崎市)の研究チーム(定藤規弘教授)が発表した。これにより、褒めることも金銭や食物と同様の「報酬」として脳内で処理されていることが明らかになった

▼研究グループは、脳中心部にある「線条体」と呼ばれる部位に着目し、男女19人(平均年齢21歳)を対象に実験。「信頼できる」や「優しい」といった84種類の言葉により褒められる状況を与えたところ、現金などの報酬を得た時と同じように、線条体が活発に反応する様子が確認された

▼「褒める」の反対語は「けなす」。最近は他人を「けなす」および「バカにする」「見下す」人が急増しているらしい。無意識に他人を見下すことで「自分は偉い、有能だ」と思い込む。『他人を見下す若者たち』(講談社現代新書)の著者、名古屋大大学院の速水敏彦教授の造語では、この現象を「仮想的有能感」と呼ぶ

▼他人を見下し、自分を守る。他者を軽視した分だけ自分の有能さを味わう。速水教授は「他者をバカにすることで他者からも受容されない人たちは、賞賛を受けることもなく努力を軽視するので、やる気が生じない」と述べている。「なるほど」と思わず膝をたたく

▼「賞賛は人に精神的な励みを与える」という長年の仮説が科学的に裏付けられる一方、他人を見下す人が増えている現実。「仮想的有能感」を一度でも持ってしまった人は、人を尊敬することから始めるべき。尊敬からしか、本当の賞賛は生まれない。うわべだけの「褒め」は見下しにつながる。(茨城・KM)

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