コラム

2008/07/15

「慈しむ」ということ(長野・SK)


▼「君の良いところは何かね?」殺人事件を起こした中学3年の少年に裁判長が聞いた。「僕の良い所は、忍耐強いところです」と眼を輝かせ答えた

▼「僕は小さい頃から母さんに、ご飯の食べ方が汚いと茶碗を投げつけられ、棒で殴られた。寒い冬にも髪を鷲づかみにされ引きづりまわされた」「髪が長いとつかまれるから自分で坊主にした。でも兄ちゃんには何もしなかった。いつも兄ちゃんも父さんも知らぬふりしていた」「母さんは僕が泣くともっともっと殴る。だから絶対泣かないことにしたんだ」「だから僕は忍耐強いんだ」

▼眼を覆いたくなる幼児虐待や幼児殺人事件を見聞するたびに、調停で訴えた少年の言葉を思い出す。事件の矛先は自ずと母親に向けられるが、日本のことわざに「子は親の背を見て育つ」とあるがその母親も同じ境遇に合ったのではと思いが巡る

▼昨年5月に熊本市の慈恵病院が「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を設置して1年が過ぎ、17人が預け入れられた。赤ちゃんポストの賛否両論が渦を巻いた。子育てのママに賛成か否かの問いに約7割が賛成した。虐待の理由に「自分の時間がとれない」が半数以上で、ストレスがたまるとしつけと虐待の境界線が判らなくなってしまうとのこと

▼預けられた子は、親が名乗り出て自ら育てるか、親権放棄及び母親の生活状況、精神状態などを十分考慮し、最悪の場合は親権剥奪などをして里親または養親に引き取ってもらうかだ。児童福祉の関係者は言う「誰か一人でも心から慈しんであげる人がいればその子は救われる」と。これは大人になっても当てはまることでは。(長野・SK)

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