コラム

2008/09/05

復興への鏡開き(新潟・TH)


▼「ヨイショ、ヨイショ、ヨイショ」。威勢の良い掛け声とともに酒樽が木槌で叩かれる。式典など取材の関係で「鏡開き」を目にする機会が多い。先日もトンネルの貫通式を取材に訪れた際に、関係者らにより勢い良く樽が割られ、出席者らに振舞われた

▼新潟県柏崎市内の清酒「越の誉」の蔵元である原酒造?は、創業1819年の老舗で、年間約160万リットルの生産量を誇る酒どころを代表する酒蔵の一つだ。1982年の日中国交正常化交渉の際には、当時の田中角栄首相も晩餐会に持参したほど

▼昨年、柏崎市に甚大な被害をもたらした中越沖地震の影響で、同社でも事務所と木造の蔵5棟が倒壊し、施設の3分の2が瓦礫と化した。「1万本の一升瓶が割れ、一面が酒の海だった」と原社長。休日で従業員が全員無事だったことと、酒作りの生命線である精米工場、仕込み工場などの生産ラインに大きな被害がなかったことが幸いし、被災から約1カ月という早さで営業を再開した

▼現在は、被災した酒蔵の再建が進められており、今月完成の模様だ。9月からは、完成した新蔵で「新生・越の誉」の仕込みを開始するそうだ、新蔵では、震災前以上の生産量を見込んでいる

▼悪夢のような地震から1年が経過した柏崎市では、現在、復旧・復興が順調に進み、震災前の状況を取り戻しつつある。原酒造?の新しい酒蔵と「越の誉」は柏崎市復興のシンボルである

▼今後も同市で行われる鏡開きには、必ず「越の誉」の酒樽が並び、震災からの復興への願いを込めた鏡開きが行われることだろう。酒にはめっぽう弱い筆者ではあるが、復興の美酒にはぜひ酔ってみたい。(新潟・HT)

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら