コラム

2008/09/11

ヒロユキを襲った違和感(埼玉・HS)


▼ヒロユキ(仮名)は大学を卒業して以来、28年振りに生まれ故郷に戻った。東京の会社を退職し、50歳で父親の会社を手伝う事になった。父親の会社は、もっか経営難に陥っている公共事業中心の建設会社

▼ヒロユキの生まれ故郷は、地方の中核都市。駅には新幹線が停車し、大きな駅ビルがそそり立ち、駅前の商店街もにぎやかだ。ただし、28年振りにそこを歩くと「違和感」に襲われた。以前は、駅前のロータリーは狭く、車も多く、町並みもゴチャゴチャしていたが、ヒロユキの生活は満たされていた。そして、父親の建設会社の経営は順調だった

▼ヒロユキを襲った違和感は何だろう?それは、28年振りに見る変化のようだ。広い駅前ロータリーと大きな駅ビル。おまけに新幹線も止まる変りようだ。駅前にあった商店は、ほとんどが駅ビルに入った。逆に、駅から少し離れた古い鰻屋や米屋は、今も変わらずにある。変わることは必要なのだろうか?

▼ヒロユキが東京でサラリーマン生活を始めた時代はバブル景気の直前であった。都心は超高層マンションの建設や大規模再開発が目白押に進められていた。町並みが見る間に変化して行く。例外ではなく、そんな変化が、生まれ故郷にも押し寄せていたのだ

▼その後、バブルが崩壊し、東京も地方都市も急激に変化の速度が鈍化した。公共事業費もピーク時の半分にまで落ち込み、父親の建設会社も経営を縮小した。本当に新幹線や駅ビルは必要だったのだろうか?変化は本当に人々の生活を満足させたのだろうか?確かにこぞって享受したはずだが、明確な結果は次の世代に明らかになるはず。(埼玉・HS)

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