コラム

2008/09/16

狭いカゴからの脱出(東京・JI)


▼この夏の思い出といえば「虫捕り」に尽きる。休日も盆休みも、網をたずさえ山や公園に駆り出された。幼い息子はうまく虫を捕らえることができず逃げられてばかり。しかし回数を重ねると上手になり、余計に面白味が増しているようだった

▼採り方を覚えると、今度は限度を超えて獲得に走る。虫カゴが小さいということを頭に入れず捕れるだけ捕る。ある時はカゴの中がバッタで一杯になった。またある時はアブラゼミで埋め尽くされた。カゴの中でセミたちは「狭い」「息苦しい」と苦悶の表情を浮かべ騒ぎ立てている。またセミがひしめきあう中にバッタが入れられたこともある。騒がしい環境の中、バッタは静かにたたずんでいた

▼経済専門誌で「建設業界の危機」の特集が多く組まれている。いずれも公共工事の減少やダンピングによる利益低下、原材料高騰で破綻するという内容である。最近はマンション販売の不調もあり、建設業に不動産業を加えて特集されている

▼仲間が増えたと考えれば心強いが、内容が業界の疲弊だけに喜べないのが実状だ。下手をすれば共倒れになってしまう。何とかこの息苦しい現状の改善策を考えなければならない。狭いカゴからの脱出方法はないものか。建設と不動産が共に手を取り解決に導くことはできないだろうか

▼虫を逃がすため息子がカゴを開けると、それまでじっとしていたバッタが勢いよくジャンプして遠くに逃げ散った。一方セミは元気がなく、飛びもせずに地面に転がり落ちてうずくまっている。孤立無援で寡黙なバッタの、力強い意思と強靭な体に少々驚かされたひとときだった。(東京・JI)

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