コラム

2008/09/17

総合評価と産業政策(東京・UT)


▼総合評価方式―。その重要性についてはここ数年、もはや語り尽くされた感がある。ただ先日、東京都日野市の取り組みを知った時、その奥深さを再認識させられた。日野市は9月1日からの総合評価導入を打ち出したが、その中で「格差是正」への取り組みを掲げているのである

▼品質確保のほか、「格差是正」を入札・契約制度で具体化するためにも総合評価を導入すると言うのだ。含みは建設労働者の低賃金、不安定雇用などの労働条件悪化を何とかしたいという切実な気持ちからなのだろうか

▼独自に評価項目へ加えた「格差是正」では具体的に何をみるのか。適正な労務単価確保や、市内企業への下請け状況を評価する。また法定外労働災害補償制度への加入、退職金制度、障害者雇用、男女共同参画推進などの取り組みを加点する方針としている

▼平成17年4月に施行された公共工事品確法では「価格と品質が総合的に優れた調達」を基本理念に掲げている。総合評価は、そのための具体的な手段として考えられている。総合評価をなぜ行うのかと問われれば、公共工事の品質を確保するためというのが主旨であり、「発注行政」の観点からみた回答だろう

▼ただ日野市の取り組みは産業政策、つまりは「業行政」の視点をも強く打ち出している。発注者が企業の健全な発展や建設労働者の待遇改善などを願うならば、1件1件の総合評価が優れた産業政策にもなり得るということを、意識すべきかもしれない。役所の視点からさらに言えば、総合評価による発注は、技術官僚が産業政策に携われることを可能にした、画期的なツールなのだろう。(東京・UT)

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