コラム

2008/10/03

食の平和が脅かされる(茨城・HS)


▼汚染米と汚染粉ミルク。邪魔な枕詞がいやに目を引く。どうして普通の「米」と「粉ミルク」ではいけないのか。商品を売るための華美なネーミングならともかく、毎日の生活に欠かせない食料品に、ネガティブな修辞は必要ない。仮にどれだけ美味だとしても、人体に害のある食品は誰も求めないだろうし、そもそも存在さえしてはいけないはずだ

▼心無い業者が汚染米を食用として不正転売した事件。転売先は370社を超え、自殺者まで出した。農水省は5年で96回の立入り検査を行っていたにもかかわらず、何も見抜けなかった。農薬やカビ毒にまみれた米を使用した食品を食べたらどうなるのか。少し考えれば誰にでもわかりそうなことだ

▼汚染粉ミルクは中国の事件だが、日本で同じことが起こらないという保障はどこにもない。こちらはすでに死者が出ており、入院患者も1万人を超すという。しかも、この不正は3年前から行われていたらしい。被害者が乳児だけに、今後の影響などが懸念される

▼商売は売り手と買い手の信頼関係の上で成り立つものだ。売り手が安全で安心な商品を売るのは当然のことだし、買い手だって売り物に毒が入っているとは決して思わない。この関係が崩れたら、買い手が一方的に被害を受けるだけになってしまう

▼一時期、「平和ボケ」という言葉がはやった。平和が当たり前になった時代に、警鐘を鳴らす意味で用いられた言葉だ。やがて、食事を口に運ぶたびに、「これは食べても大丈夫なのだろうか」と悩まなければいけない時代が来るのだろうか。食の平和ボケを実感させられる時代。そんな時代は悲しすぎる。(茨城・HS)

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