コラム

2008/10/30

別の場所へ引っ越し(群馬・AN)


▼建設業が置かれている立場は、非常に大きな津波に襲われている海岸沿いの家々のようなもの。それも資金繰りの悪化や受注難に陥っている企業が海岸の最前列にいて、現在次々と建設不況という海の猛威に飲み込まれている。海から離れれば離れるほど、経営状況が良く、受注機会の多い企業が立ち並んでいる

▼東証2部に上場し、群馬県内を代表する井上工業が経営破綻した。同社は県内随一の歴史を持ち、高崎市民から「観音様」と親しまれている白衣大観音像も同社の故井上保三郎氏が建立した。また、群馬音楽センターや県立近代武術館、県立歴史博物館などの文化施設を多数手がけ、大澤正明県知事も「歴史と伝統のある井上工業の破綻は非常に残念」と定例記者会見で嘆いた

▼同社の破綻は、県内へ多大な影響を及ぼすことは必至で、県も関連企業の連鎖倒産防止のための緊急対策を講じた。筆者の友人も同社へ勤務しており、連絡したところ「今後どうすればよいのか…」と憔悴する。建設業のみならず、県内全体の経済が大きく揺らいでいる

▼調査会社がまとめた今年9月までの県内倒産整理状況を見ると、全132件のうち建設業はもっとも多い42件の倒産が発生。公共工事の削減から潜在的な倒産予備軍が全県に存在していることは周知の事実であるが、経営環境が悪化している中小クラスの生き残りを賭けたサバイバルはいつまで続くのか

▼海から離れている企業は建設不況の荒波に飲み込まれないが、海岸に近い企業はどんどん海の中へ引きずり込まれる。行政の言い分ではないが、別の場所へ引っ越すことも選択肢の1つということか。(群馬・AN)

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