コラム

2008/11/10

ゴールはそこでいいのか(山梨・CT)


▼「とんぼ」のメロディが耳から離れない。元プロ野球選手、清原和博氏の引退試合翌日のことだ。歌手長渕剛が唄う「とんぼ」は、清原選手現役時代のテーマソング。試合の後に行われた引退セレモニーでは長渕本人が生演奏を披露し話題を呼んだ。各テレビ局もこぞってこの場面を放映した

▼後日、この楽曲を含むアルバムのランキングが急上昇したことでも清原選手の人気がうかがえる。しかし引退までの数年はケガに苦しんだ印象が非常に強い

▼スポーツ選手にケガの悩みはつきものだが、高畠導宏氏も肩を痛めプロ野球選手としては不遇な現役時代を過ごした。彼の引退は28歳の時であった。その後、約30年間で7球団を渡り歩き、イチローなど30人以上のタイトルホルダーを育てた名打撃コーチとなる。だが、注目すべきは59歳の春、新人教師として高校の教壇に立ったことだ。高畠氏は50代に入ってから教師になる夢を叶えるため、コーチ業の傍ら通信教育で5年かけて教員免許を取得した

▼59歳という年齢は会社員なら定年間近、セカンドライフに夢膨らませている時であろう。伝説の打撃コーチは球団のオファーを退けて、あえて「教育」という険しい道のりを選んだ。しかし1年3カ月後、志半ばで病に倒れる。生徒に慕われ、亡くなる数カ月前まで授業を行っていたという

▼年齢や環境を言い訳にしてあきらめていることはないか。定年や引退は一つの区切りでしかない。「極楽とんぼ」を決め込むのも悪くはないが、挑戦し続ける人生だってある。高畠氏の座右の銘は「氣力」。あきらめるなと言い続けた先生の授業は今も続いている。(山梨・CT)

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