コラム

2008/12/08

外観ばかりでなく中身も(東京・JI)


▼客席をゾウやサイが歩き回り、鳥が飛び回る。舞台上では大地を焦がさんばかりの大きな太陽が光を放ち、動物たちは歌とダンスで祭りを盛り上げる。王に子供が生まれたのだ。にぎやかな祝祭から始まるミュージカル「ライオンキング」は、この子ライオンが王になるまでの成長を描く物語だ

▼劇団四季によるこの舞台も10周年。その初年度に見て以来、久しぶりの観劇となった。当時は妻と2人で見たが、今回は息子2人も一緒。休憩時間も含めて3時間の長丁場だが、子供たちは歌い踊る動物たちに目を奪われていた。終演後に感想を聞くと「少しだけ泣いた」という。妻はイボイノシシのぬいぐるみを購入して上機嫌だった

▼このミュージカルは、劇団専用の施設「四季劇場」(東京・浜松町)で行われている。内部には「春」と「秋」の2つのホールがあり、ライオンキングは座席数1255の「春」で上演中。好演もあるが、シートはゆったりしており、長時間座っていても尻が痛くならない

▼ホールは俳優の声が良く通る。舞台下にあるオーケストラピット「オケピ」で演奏する楽団の音楽とのバランスも最高だ。アフリカを思わせる太鼓の音も心地良い。建築物というハードと、ミュージカルというソフトがうまく溶け合い素晴らしい音響空間となっている

▼昨今の「公共施設はムダ」という批判は、施設を整備するばかりで活用できていない点もある。「何のために」「どのように」が確立していれば、施設というのは持てる能力を発揮するものだ。若きライオンも、外見だけでなく中身の成熟を伴って、ようやく王の座についていた。(東京・JI)

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