コラム

2008/12/17

債権者説明会にて(群馬・HI)


▼「えっ、あの会社が」「やっぱり」。驚きと諦め。建設業界は今年一年、こうした心情で何度も揺れ動いた。身近な会社、地域の中心的な会社、堅実経営を誇っていた会社。多くの建設会社が、静かに業界を去っていった

▼先日、経営破綻した建設会社の債権者説明会に列席した。定刻を待つ重苦しい雰囲気の会場へ姿を現した元社長は冒頭、破綻に至った経緯を説明して陳謝。続いて申し立て代理人が財務内容と負債の概要を報告。破産管財人の紹介も行われた。司会が「質疑応答に移ります。質疑のある人は挙手願います」との言葉を合図に、会場内の空気が一変した

▼次々に挙がる手。荒々しい声で怒りをあらわにする債権者に対し、ただ頭を下げ続ける会社側。感情的な債権者の質問に、法的かつ事務的に応える弁護士。配当に充てる財源がほとんどないことが明らかになると、諦めムードから席を立つ債権者の姿が目立った

▼「先代の社長にもお世話になったから、倒産してほしくなかった」。質問の中で一人の債権者が言うと、怒りにざわついていた会場が冷静を取り戻した。会社は営利を求めて事業活動を行う。しかし建設会社は、経済的な存在以上に社会的な存在でもある。地方では、祭事や文化事業にも積極的に関わっていることも多く、文化的な存在でも

▼債権者説明会の会場を後にしたとき、ふと思った。「会社は誰のものだろう」。会場にいた債権者、株主、経営者だろうか。しかし建設業界は裾野の広い産業。特に地方は、日々のさまざまな生活シーンで関わりを持っていることに気付く。最後に会場内を覆った空気には、わびしさがただよっていた。(群馬・HI)

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